昔ながらの工務店には「住居は夏向きを旨とすべし」という言葉が未だに生きているようで、ご当地九州南部においても冬の浴室、脱衣所の寒さには参ります。北海道を除いて日本の住宅の7、8割はこのような寒い住宅のようです。
2年前のこと、寒い我が家の洗面脱衣所に遠赤外暖房機を設置しました。
しかし「すぐポカポカ暖まる」というレビューをよく見かけますが、これは実際のところどうなのでしょうか。
二つのタイプの「暖かさ」の違い
暖かさの感じ方には大きく二つのタイプがあり、それらは暖房機器にも反映されています。
その「二つのタイプ」とは・・・
- 周囲の空気の暖かさを身体全体が感じるもの
- 熱源から直接熱線を受けることにより皮膚が感じる暖かさ
この二つを押さえておくことが用途や場所に応じた暖房器具を選択するポイントとなります。
その1 周囲の空気を暖めるタイプ-エアコン、セラミックファンヒーター、石油ファンヒーター-
冬の寒い日の夕方帰宅した。家族そろって出かけていたので家の中はすっかり冷え込んでいた。さっそくエアコンの暖房を入れる。
ヒートポンプ式エアコンは熱が溜まるまでしばらく時間がかかるが、徐々に室温も上がりだし20分もすれば12℃だった室温が20℃になった。
暖かい空気は天井付近に溜まるため床付近は少し寒いが、羽を下向きにしたり扇風機で攪拌するなど対策はある。
比較的暖かさにはムラが無く、顔だけ暑くて背中は寒いなどということも少ない。
灯油の方がコストが低いと言われてきたが、最近のエアコンは省電力型が多く長時間運転でも経済的だ。
これはエアコンとか灯油ストーブなどにより空気(やがては壁や床も)が暖められ室内ほぼ全域が暖かい、或いは少なくとも寒くはないと感じられるものです。


立ち上がりに時間がかかるけど、居間は全体がムラなく快適な室温だ



その代わり廊下やトイレは寒いまま。全面床暖やセントラルヒーティングだと家中ほとんど温度差がない環境にできるんだが、コストがなあ。



あまり使わないところも暖房するっていうのは無駄な気がするけど…
その2 熱線が直接皮膚に作用する暖かさのタイプ-グラファイトヒーターなど-
さあ風呂に入ろう。浴室入り口上の壁に取り付けた遠赤外暖房機をリモコンでスイッチオン。
オレンジ色に輝くヒーターから直接放射される遠赤外線でたちまち顔や手に暖かさを感じる。
急いで浴室へ入る。人感センサーの働きでヒーターは1分後に自動停止。特に寒い時はそのまま連続運転。
このヒーターのありがたみは風呂から上がる時によくわかる。すぐに人感センサーが働いて頭上から熱線を照射して暖めてくれるので、リモコン操作にモタモタしなくていい。
浴室から出る前に手や足をちょっと出せばセンサーが反応して早めに運転を開始させることも出来る。
熱線を直接受けている首回り、肩などはぽかぽかと温かい。でもヒーターから遠い足元はまだちょっと寒い。
空気は冷たいままなのだが体の一部だけでも温かさを感じると安心感がある。
例えるなら寒空の戸外でたき火に当たっているような感覚。
バスタオルで身体を拭きながらさっさと服を着る。
服を着終える頃には入浴での温かさが盛り返し、今度はヒーターが暑すぎると感じスイッチを切った。
冬の戸外ではしっかり着込んでいても顔や首筋、手足はやはり寒いものです。
そんな中で松飾やしめ縄などを燃やすどんど焼の火や木枯らしの吹く中で取り囲むたき火の火。これらの火にかざした手や顔がすぐに感じる暖かさは忘れられません。
太陽の日差しも同様ですね。一時雲に隠れていた太陽が再度姿を見せたときに感じる顔や手に感じる暖かさはほっとします。
しかし周囲の空気が暖まったわけではありません。相変わらず冷たいままです。
でも顔や手は暖かさを感じます。太陽からの遠赤外線が直接皮膚に作用して暖かさを感じさせるのです。





常時いる場所ではないので必要な時だけ暖房するのは合理的だね。



そうね。そして必要な時にはすぐに暖めてくれるならOK!
寒い脱衣所に相応しい遠赤外線方式
洗面脱衣所が家の中で一番寒いところなら、上で述べたように必要な時(入浴の前後)にできるだけ早く暖まることが最重要であり、遠赤外線方式の速暖暖房機がもっとも相応しいでしょう。ただし…



「速暖」といっても部屋がたちまちポカポカになるわけじゃないんだ。遠赤外線が当たる皮膚がすぐに暖かさを感じるということ



それでたき火にあたっている感じといわれるのね



裸でいるところだからすぐに暖めてくれるのは助かる



入浴の前後を極短時間でサポートしてくれる感じかな。
脱衣所全体を暖めるのならエアコンの方が勝っている。
時間が掛かるけど。
発熱体の種類による違い
我が家ではオール電化ということもあり、ここでは灯油ストーブなど電気式以外の機器は除外します。
しかし街中の量販店に行くと同じ電気式暖房機と言っても発熱体によっていくつかの種類がある上に同一タイプでも価格はピンからキリまで幅があります。


またメーカーによって暖房方式に思い思いの名称がついていたり、「速暖」とか「0.5秒」などの表記の違いが分かりにくいものもありますので、まず次のようにおおまかですが発熱体の違いで分類してみました。
- グラファイトヒーター
- シーズヒーター
- ハロゲンヒーター
- カーボンヒーター
- ハイブリッド型
製品の形を見ても発熱体の種類はわかりにくいです。説明書を見たり店員に確認したほうがいいでしょう。
遠赤外線とは・・・
地球上の物質は全て遠赤外線を発しています。その中でもカーボンやセラミックというものは遠赤外線の量も多く、加熱することにより強烈に発します。
発熱体の種類によってそれぞれ速暖性などに違いがあります。
遠赤外線が当たっている物体、例えば皮膚や壁、床などが暖まり、やがては周囲の空気が暖まるのですが、初期には暖房の範囲が限られます。
このうち我が家にあるヒーター2種類についてのみご紹介したいと思います。
① グラファイトヒーター(一番のお勧め)


写真は我が家の洗面所に採用したもの。グラファイトとは黒鉛のことで炭素材料の一種です。
【特徴】
- カーボンヒーターより赤外線の照射量が多い
- 熱の伝導率が高いので立ち上がりが0.2秒と断トツ早く暖まりやすい
- 放射範囲が狭いので部屋全体を暖めるのには向かない。
- ヒーターが赤く輝いて眩しい(ときどき怖いくらい)
脱衣所は床にいろいろ物を置いていることが多いこと、暖房を使わない(涼風運転はありますが)夏季期間は邪魔にならない壁取り付けタイプもあり、この機種はお勧めです。
「相当の熱量を持ちごく短時間で作動する」ことが脱衣所においては一番の条件となりますので、このグラファイトヒーターが最も適しているのではないかと思います。
この製品についてもう少し詳しく
購入設置した製品は下図のものですが、記事に書いた通り本当に速暖です。実際の運転は短時間で済みますので、いつもフルパワーで使っています。
なおこの製品のリモコンですが、全く押した感のないボタンで使い勝手は良くないです。
更に赤外線の照射角が狭いためか、かなり正確に製品の受光部に向けないと反応しません。
ですからリモコンは製品の真下に設置するか、ホルダからリモコンを取り出して製品に向けることになりそうです。人感センサーやタイマーを活用しましょう。
この種の暖房機はいくつかのメーカーが出しています。ヒーターのタイプが同じであれば性能はあまり変わらないでしょう。大型の家電販売店で現物を比較されるのがよろしいと思います。



グラファイトがおすすめだけど、参考までにもう一つ…
② シーズヒーター


写真は居間で使用しているコロナ製のシーズヒーター。
以前は妻がこのシーズヒーターをその都度脱衣所まで運んで使っていました。
【特徴】
- 暖かさや耐久性などの性能が高い
- ほとんど光ることなく黒いままなので眩しくない
- 立ち上がりが遅く暖かくなるまで5分くらい要する
立ち上がりが遅いのは、はっきり言って脱衣所用には適当ではありません。



長時間連続運転するのであればエアコンの方が経済的
気になる電気代は?
製品の仕様から抜粋すると単位時間ごとの電気代は下表のとおりです。(27円/kWh で計算)
600W(弱) | 約16.6円/時間 |
600W(強) | 約16.7円/時間 |
1200W(弱) | 約32.8円/時間 |
1200W(強) | 約32.9円/時間 (速暖効果を感じるにはこのくらいが必要) |
涼風(強) | 約0.54円/時間 |
金額は各電力会社及び料金プランによって若干異なります。
九州電力の「電化でナイト・セレクト21」プランでは令和5年4月から値上がりとなり、26.84/kWh → 27.57/kWh(平日昼間・夏冬の場合)となります。
1時間あたり30円超はずいぶん高いような気がしますが、長時間使用することは少ないので結果として電気代は抑えることが出来ます。
自分でできる本体の取り付け
私は通販で購入したので設置は自分で行いました。店頭での購入ならエアコンのように店側が工事をしてくれるかもしれません(取付自体は簡単です)。
【本体取り付けのポイント】
本体の裏側に付いている金属プレートを受け止めるためのもう一つの金具1枚を4本の木ネジで壁に取り付けるだけです。
ただし下地が無いとか石膏ボードなどの場合(木ねじが効かない)は土台としてボードアンカーを埋める必要があること、近くにコンセントがあることが条件です。










暖房機本体は意外に軽く(3.7kg)、取付工事は一人で十分可能です。
本体付属の電源コード長は2.5メートルです。この範囲内に壁コンセントが必要です。テーブルタップで延長するのは止めましょう。
実際に使ってみた感想
寒いけれど暖かい



寒いけれど暖かい? どういうこと?
暖房機を設置した年の冬に2ヶ月ばかり室温と暖房の状況(感覚的なものですが)をメモしておりました。概ね次のようなものです。
期間中の脱衣所の室温は10℃から18℃くらいの間でした。風呂に入る時はさほど気にはならないのですが、浴室から出たばかりは体が濡れているのでかなり寒く感じました。こうなると18℃も10℃も変わりません。
この時に頭上から照射してくる熱線は本当に暖を感じさせてくれます。まさに雲の隙間から姿を現したお日様の陽射しのようにです。ただその範囲はごく狭くせいぜい肩から背中の上部のあたりまでです。部屋が暖まるという感じはありません。
この時の感想はいわば「寒いけれど暖かい」といった感じなのです。そう、既述のとおり寒い戸外で寒い寒いと言いながらたき火の前で「あったかいねー」という感じです。さっさとバスタオルで身体を拭き服を着ます。
遠赤外暖房機はこの服を着るまでの短い時間をサポートしてくれるものです。
冷え込みがひどいと太刀打ちできない状況も
しかし室内の冷え込みが特にひどいと、その大きな冷気の塊の中では遠赤外暖房機でも歯が立たないものです。
ですから暖房機だけに頼るのではなく、その前に室温の低下をできるだけ防ぐ対策も必要でしょう。
それを言ったら結局家全体のリフォームをしようということに話が戻ってしまいますね。
でも壁内の断熱対策のような大掛かりなものは無理としても、DIYで少しずつ行える対策もあります。
- 内窓を付ける
- 窓ガラスに断熱シートを貼る
- 床断熱をする
もちろん断熱材等が発熱するわけではないのですが、外からの冷気の侵入を阻止して室温を維持する助けにはなるでしょう。
急激な温度差で起こるヒートショック
● ヒートショックとは
浴室やトイレは家の北側にあることが多く寒いと感じる場所の上位に上がりますが、脱衣所は裸になるところでその直後に熱い風呂に入るのはとても危険と言えるでしょう。これをヒートショックといいます。
2018年のデータですが、交通事故による高齢者(65歳以上)の死亡者数が1,966人であったのに対し高齢者(同)の入浴中の死亡者数が4,900人だそうです(警察庁・消費者庁)。
ただ入浴中の事故には転倒なども含まれるため必ずしもヒートショックによるものではないのですが、交通事故の死者数が減少しつつあるのに対して入浴中の事故が年々増加傾向にあることには注目しなければなりません。
● ヒートショックを防ぐためにはその他の工夫も
脱衣所、洗い場、浴槽間の急激な温度変化を小さくすることが大事です。
シャワーだけだと厳しいのですが、浴槽にお湯があるだけでも気温は上がります。
ふたを外しておくとか入浴前にお湯を洗い場に撒くのも効果的です。
また家族ができるだけ間隔を空けないで入浴することも浴室内の温度を維持するとともにエネルギーの無駄を省くことにもつながります。
遠赤外暖房機 Q&A
自宅で使っているグラファイト遠赤外暖房機について、いくつか Q&Aにまとめてみました。
天井取り付けタイプもあります。
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(おわり)
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