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水俣病と福島第一原発

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福島第一処理水海洋放出開始 2023.8.24

2023.8.25

福島第一原発の処理水 海洋放出始まる

2023年8月24日午後1時過ぎ、福島第一原発処理水の海洋放出が始まりました。

放出完了には約30年を要する見込みとのことです。

しかし汚染物質の濃度が科学的に基準値以下であっても、水産物が汚染されているのではないかという不安が払しょくできているわけではありません。

- 政府、東京電力の今後の方針 -

東京電力は、風評被害が発生した場合は地域や業種を問わず賠償の方針を示すと同時に、廃炉目標の2051年までには放出量を0にする予定としています。

また、政府も総額800億円の基金を使って漁業者の支援を行うことにしています。

これに先立つ22日には総理官邸で行われた関係閣僚会議で、岸田首相は次のように話しました。

(漁業者の)生産継続に対する不安に対処すべく、たとえ今後数十年の長期に渡ろうともALPS処理水の処分が完了するまで政府として責任をもって取り組んでいきます。-岸田総理大臣

まずは国内の消費者の理解が必要

- 分かっているつもりでもわが身に降りかかる問題だと意識が変わる -

かつて、大阪市長が福島第一原発の処理水を大阪湾に流してもいいと言っているのをニュースで見ました。

これに対して大阪の主婦がテレビのインタビューで答えていました。

「そんな危ないもの流されたら困る」

処理水が海洋に放出された場合、風評により付近で取れた魚が売れなくなることも大きな問題です。

大阪の主婦が答えた「そんな危ないもの」を身の回りには近づけたくないと思うのは、誰にとっても当然のことでしょう。

いくら科学的な数値が基準を大きく下回っていても、感覚的には「汚いもの」なのです。

これが普通の感覚かもしれません。

数年前のことです。鹿児島県の西部にある超大型スーパーで、店の入り口付近に福島産のリンゴが山になっていました。

その十数メートル離れたところには長野産リンゴが陳列してありました。

福島産リンゴの価格は長野産の3分の1なのに、売れている気配がほとんどありませんでした。

頭では理解していても「福島産」の文字を目にすると、やはり手が出ないのでしょう。

日本人が買わない農産物を海外の客が買うはずはありません。水産物も同様です。

科学的な根拠は理解していても手にするには二の足を踏んでしまうのでしょう。

それが生活者としての普通の感覚であり、その行動がまさに風評につながるのです。

中国による日本産水産物の輸入禁止措置は、そこに付け込んでいるのではないでしょうか。

政府の対応はいきあたりばったり

- 中国の対応は予測できていたはずなのに -

本日の福島第一原発処理水の海洋放出を受けて、中国は日本産の水産物については全面的に輸入を禁止する旨発表しています。

中国の主張は確かに科学的根拠に基づかない非常に政治的な内容で、日本を揺さぶり、同盟国との連携にくさびを打ちたいという思惑が透けて見えるようです。

いくら科学的根拠を数値をもって説明しても聴く耳を持たないのは、かの国だけではないのです。

しかしこれに対する政府の対応は行き当たりばったり。

近隣諸国の理解を得ることを重点に置いているという割には、十分予想できた今回の中国の反応に困惑しているのですから。

- 偏見を取り除くには荒療治も -

本当に問題ないのであれば大阪市長の言葉に甘えて、処理水を10万トンタンカーにでも積み替えて大阪湾に流したらいいのです。

一般貨物船のバラスト水として積み込み、大阪湾で放出することだって可能です。

もちろん東京湾でもかまいません。1年くらい続けてみたらどうでしょうか。

これはこの風評を払拭するのに最も有効な方法であろうと思っています。

- 東京湾、大阪湾に流せないのなら、福島の海もダメでしょう -

現に安全が確認されている福島第一原発沖の海水(処理水)なのだから何ら問題はないはずです。

それでもし反対運動が起きるようであれば、福島の海にだって当然流すことは許されないはずです。

そして一番憂慮すべきは日本国民自身だったのだということが明らかになることでしょう。

「安心」を感じるには相当の時間がかかるもの

下の写真は2021年11月末に鹿児島のスーパーで見かけたものです。私はすぐ買いました。

いつもあるわけではありません。最近はまた見かけません。

2021年末に鹿児島県のスーパーで見かけた福島産米
2021年末、鹿児島のスーパーにありました。社長には敬意を表します。
会津産コシヒカリ
鹿児島産の隣にありました。販売者は熊本の業者さん。(2023年11月)

あなたは店頭で目にした福島県沖で獲れた魚を買いますか?

長野県産のリンゴを差し置いて福島産のリンゴを買いますか? 驚異の低価格だったとしても。

「えっ、福島県産?」と聞いても処理水や放射能を意識しなくなるまでにはかなりの時間がかかることでしょう。

(終わり)

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