子供の頃に慣れ親しんだ昔話、これらの中には神話に由来したものが少なくないことに気が付きます。ここでご紹介する「海幸彦・山幸彦」もその一つです。
豊玉姫神社と神話の世界
神武天皇のおばあちゃん
豊玉姫神社は鹿児島県南九州市知覧町にある神社で、豊玉姫命(トヨタマヒメノミコト)を主祭神としています。
なお以後古事記によるトヨタマビメと記載します。
トヨタマビメは神武天皇の祖母に当たります。関係者として海幸山幸が登場します。
神話を少しだけでも知ってから訪れると更に興味が増すのではないでしょうか。
豊玉姫(トヨタマビメ)について
海幸山幸の話は多くの方がご存じかもしれません。
しかしトヨタマビメとはいったい誰で、海幸山幸とはどんな関係なのでしょうか。
まずは神話をトヨタマビメが登場する前後に絞って簡単に振り返ってみましょう。
時をさかのぼることしばし…。
天孫降臨
ニニギノミコト(以後ニニギ)は日向の国、高千穂の峰に天降ります(天孫降臨)。ニニギは日向の地から西に進み笠沙の岬に出ます。ここで大山津見神の娘コノハナサクヤビメと出会い結婚します。
ニニギは一夜で身籠ったコノハナサクヤヒメを疑います。貞操を疑われたコノハナサクヤヒメはその潔白を証明するために、産屋を密室状態にし、火を放ってその中で三柱の子を出産します。子供たちにはすべて炎の状態に応じた名前が付けられているのはそのためです。
- 火照命・・・ホデリノミコト
- 火須勢理命・・・ホスセリノミコト
- 火遠理命・・・ホヲリノミコト
海幸彦、山幸彦
この中で長兄の火照命(ホデリノミコト)と末弟(ホヲリノミコト)がそれぞれ海幸彦であり山幸彦です。
弟の山幸彦が兄の海幸彦から借りた釣り針を紛失する事件があり、その後両者の間にはいろいろあったのですが、結局弟の山幸彦が兄を屈服させます。
ホヲリノミコトは海神の宮で海神の娘豊玉姫(以後トヨタマビメ)と結婚します。
後に両者は地上世界に戻りますが、トヨタマビメは身ごもっており、海辺の波打ち際に産屋を作ります。
トヨタマビメは出産にあたり、海辺の波打ち際に産屋を作るのですが、産屋の屋根に鵜の羽を葺き終えないうちに産気づいてしまいます。
出産にあたりトヨタマビメはホヲリに対して「見るな」といいます。しかしホヲリは産屋をのぞき見してしまいます。
ホヲリが目にしたのはトヨタマビメが「八尋わに」の姿で腹ばい、のたうち回っていました。
その姿をみられたトヨタマビメは恥じ入り、子を産んだのち元の海神の世界に戻ってしまうのです。
フカヤフキアエズノミコト(後の神武天皇の父)の誕生
トヨタマビメが生んだ子が天津日高日子波限建鵜葺草葺合命です。文字通り産屋の屋根に鵜の羽を葺き終える前に出産してしまったので「ふきあえず」の名前になったのです。
なおトヨタマビメは海神の世界に戻ったものの親子の情に忍びえず、生まれた子の養育のために妹のタマヨリビメを地上の世界に送ります。
ウカヤフキアエズノミコトは成長して、自分を養育してくれた叔母のタマヨリビメと結婚します。
ヤマトイハレビコノミコト(後の神武天皇)の誕生
そして二人の間に生まれた四兄弟のうち末弟のカムヤマトイハレビコノミコトが即位して後の神武天皇になるのです。
結構ややこしいですね。系図の一部を載せておきます。
四角の線で囲まれているのがこの記事で触れている範囲です。
古事記を読んでみると結構スケールの大きい話で、また物語の舞台となっている地域も広範囲で、古事記を基にした伝承で全国各地に神社やその他の遺跡があるのですね。
その物語も個々には聞いたことがあっても時系列でみるとなかなかつながりが覚えきれないこともあります。
いかがでしたか。トヨタマビメは山幸彦の妻であり、またのちの神武天皇の祖母だったんですね。
古事記…一言でいうと天皇の歴史なのですが、大変スケールの大きな話です。そして関連施設、といっても神社や御陵なのですが、これがまた全国至る所にあります。
無理やり古事記の内容に合わせようとすると、地理的にも無理があることが少なくありません。まあ二千年近くにわたり国民に浸透してきたものですから
水車からくりでの海幸山幸の舞台
2022年7月、豊玉姫神社の水車からくりがコロナ禍のこともあり3年ぶりに行われました。水車からくりというのは舞台の人形を水車を動力源として動かすもので、今回の出し物は「海幸山幸」のお話でした。
豊玉姫神社の所在地
水車からくり人形の舞台裏
ではからくり人形の動力源である水車と細かい動作を作り出しているメカを見てみましょう。(音が出ます)
(おわり)